私にはなぜ彼女がそんな表情をするのか分からなかった。
行動も、言動も、私は未だになにひとつ彼女のことを分かっていなかった。
「また、来ますね」
珈琲の淵が見えると、彼女は食器を片付け、私の口の周りを拭いて出て行った。
前は一日中だってここにいたのに、彼女はあまりここに寄り付かなくなっていた。
表情も当初より大分削げ落ち、考え事をするような無表情が多くなっていた。
彼女のことをなにひとつ知らない私は、それがなにを意味しているのかも分からなかった。
いや、本当は見ないようにしていたのかもしれなかった…。
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